本記事では私自身が採用側の面接官としてこれまで延べ500名以上の候補者と面談してきた中からの経験から、よく聞かれる質問とその意図、そしてどのような回答が理想的か、ポイントについて書きました。
また、私自身が候補者として転職をしてきた経験からも中途採用者がよく聞かれる質問をまとめています。具体例も見ながら予習していきましょう。
転職面接の流れ
まずは一般的な面接の流れについて確認しておきましょう。最初の一次面接では会社概要や募集ポジションについての説明を面接官がしてくれることが一般的で、以下のような流れになります。
2次面接以降は会社案内が省略され、候補者側の自己紹介から開始することが多いです。
- 1.会社案内(企業)
- 2.自己紹介(候補者)
- 3.志望動機と転職理由(候補者)
- 4.経歴や実績についての深掘り(企業)
- 5.その他質問(企業)
- 6.面接官に対しての質問(候補者)
転職面接で聞かれること:各ステップでの面接官の質問意図と回答例
自己紹介
質問例
「あなたの経歴を教えてください」
「いままでの経歴とこれまでの転職理由も教えてください」
質問意図
・あなたが何をしてきた人か知りたい
・どのような人柄か知りたい
・プレゼンテーション能力を見たい
・論理的思考力のある人か見たい
・お互いのアイスブレイクが目的
回答例
一貫して同じ職種の場合
「10年間法人営業職に従事してきました。1社目ではある程度基本的なスキルを身に着けることができましたので、2社目ではIT系のプロダクトに興味を持っていたので、IT系の専門性を高めるため〇〇社に転職しました。」
異業種を転々としてきた人
「イベントの企画を中心に多くの人とコミュニケーションをとる仕事をしてきました。前回の転職では、これまでの仕事よりこだわりをもった企画を実現するため転職しキャリアアップしました。」
回答のコツ
一貫性を見せること、かつ新しくチャレンジしたいから転職する必要があったことをすると主体性をもっている人だという印象を与えることができます。異業種間での転職を転々としている人でも、少し抽象度を上げてそれらの経験を一貫性のある経験として表現しましょう。逆に一貫性のない、行き当たりばったりのような経歴として話してしまうのはNGです。
志望動機と転職理由
質問例
「今回転職にいたった理由を教えてください」
「良い会社のようですがなぜ辞められたのですか?」
「当社の志望動機を聞かせてください。」
質問意図
・転職理由となった原因を当社でサポートできるか見たい
・転職理由からその人の性格や傾向を見たい
・入社後、同じことで退職しないかを見たい
回答例
ネガティブ理由の回答例
「残業が多く家族と週末時間が取れないほど土日出社を余儀なくされる状態になっていました。人事に話し合いの場を設けてもらい、土日に関しては、家庭をもっている人も多いため、あらかじめ計画のうえローテーションで業務をするのはどうかということを提案しました。検討してくれたもののそれを仕組化することが社内では難しいのでしばらくは改善ができないといわれました。そこで家族を優先したいため転職することを決めました。」
ポジティブ理由の回答例
「前職では幅広くマーケティングの職種をこなしていましたが、その中でもPR業務には社会へメッセージを送れる面もあるので大きな達成感を感じていました。企業と社会の架け橋になるPR職としてのプロフェッショナルになりたいと思うようになりました。今回は社会貢献度の高い商材を取り扱う御社で、PR分野で貢献し、自身の専門性を高めたいと思い応募させていただきました。
回答のコツ
ネガティブなことが原因での転職は一定あることなので仕方がありません。しかしそのネガティブ原因を改善できるようなアクションを起こしたうえでも改善できなかったので転職にいたったことを説明し、面接官を納得させることが必要です。ポジティブな転職に関しては、チャンスがあると聞いて応募した、という言い方で問題ないですが、ではそれが実現できなかったらまた転職してしまわないか、と思わせるので、それ以外にも、企業自体に魅力を感じていることを伝えることが重要でしょう。
経歴や実績についての深掘り
質問例
「キャリアの中で一番大きな実績について教えてください。その時どういった困難があり、どう乗り越えましたか?」
「〇〇という実績をあげるには、多くの人の協力が必要だったと思いますけど、どのように周りの人を巻き込んで参加してもらったのですか?」
「〇〇を実現するには多大なコストを要したと思いますけども、どのように経営層などのステークホルダーを説得したのか教えてください。」
「どのような数値に着目し、それをどうやって改善しましたか?」※行動面接(STARメソッドなどと呼ばれる手法)
質問意図
・タスク遂行のプロセスが見たい
・チームワークや人とどうやって働くかを見たい
・社内でのコミュニケーション力や影響力が見たい
回答例
「経営企画として、人手不足が顕著で残業も常態化しているカスタマーサクセスチームに改善の余地があると感じていました。改善するに際して、カスタマーサクセスチームのメンバーからのヒアリングをし、できるだけ改善の方向で進めたいということを伝えました。また定例などでチームとの改善会議を持つことにしました。着目した数字は、問い合わせの件数から制約率に着目していました。これだけ人時工数が削減ができる、かつ利益につながることを伝えるために、経営には5か年での改善インパクトをシミュレーションしたものを発表し承認してもらいました。
回答のコツ
面接官は、どのような思考プロセスからプロジェクトのイニシアチブを取り、そこから社内でプロジェクト化し、最終的にプロジェクトをやり遂げるまで至るかというかを見ています。ここで私のお勧めは、すべての実績についてSTARメソッドという手法で回答することです。STARメソッドは「Situation(状況)」「Task(課題)」「Action(行動)」「Result(結果)」に分解しプロジェクトや一つの仕事を説明する方法です。
ストーリーとして準備しておくと、自分自身の頭にも残りますし、流れに沿ってロジカルに答えることができます。
その際、Situation(状況)部分で自分が問題点や改善点を認識するうえで着目した数値を記載し、最終的にその数字がプロジェクトで改善されどうなったか、をResult(結果)に盛り込むと一貫した内容になりますので、かなりお勧めです。
Amazonなどでは行動面接(*)と言い、まず何の数値に着目したかから話すような面接のスタイルを取ります。
(*行動面接は候補者の思考プロセス~行動を深堀し、ロジカルシンキングやアクションの合理性、一貫性を見るために使われる面接手法です)
転職面接で聞かれること:その他質問について
今後のモチベーションに関しての質問
質問例
「最終的なキャリアゴールは何ですか?」
「1年後、3年後、5年後それぞれの目標を教えてください。」
「短期的なキャリアの目標の実現のために日々何かやっていますか?」
質問意図
・向上心のある人か
・今の会社を選ぶことが目標の実現に近づくか
・当社の方向性とあっているか
回答例
「5年後の目標としてすべてのクリエイティブを統括するディレクター職になりたいと思っています。そのためには少なくとも3年間で部署を統括する立場で複数のプロジェクトを統括してディレクションする経験をこなしたいと思っています。」
「専門家として仕事をこなしてきましたが、自分一人で生産性を高めるよりも人と協業すれば会社により大きな仕事のインパクトを与えられることが分かりました。その経験を積みたく管理職の経験につきたいと思っています。」
回答のコツ
ここでは計画的に目指している目標があり、そのために今何をするべきかを明確に回答しましょう。目標はあるけど特に何もしていない。というのでは向上心はあるけど、計画や行動力のない人だと思われることもあります。
カルチャーフィットを見る質問
その企業の社風にあうかどうかを見る部分です。例えば、ベンチャー企業でガッツのある人が社風に合う会社では、あなたが失敗からどのように這い上がったかを聞いて、会社でそのようなシーンを想定して考えていたりします。職場にあった人かどうかを見極めます。
質問例
「繁忙期には残業が発生することもあるが大丈夫?」
「知見のある人がいないのでチームを教育してほしいけどそういった経験はありますか?」
「成果を上げていないと評価されない社風だけど大丈夫?」
質問意図
・実際の働き方を伝えて就業後の乖離がないようにする
・志望度合いを確認
・実際の期待値を伝える
回答例
「休日出勤や残業が常にあるのは家庭の事情もあるので厳しいですが、一時的なものであれば問題ありません。」
「達成数値をもとに正当な評価を受けたいと思っていたので、そういった評価制度のほうがむしろありがたいです。」
回答のコツ
対応できる範囲はきちんと伝えるようにしましょう。あるいは、対応が厳しい場合も、ここまでであれば問題ないということを伝えたほうが印象はそこまで悪くはなりません。
転職の際の面接で面接官別に聞かれること
人事面接(一次面接・二次面接)で聞かれること
人事の人は主に人柄を見ます。それからカルチャーフィットからキャリアパスをどう考えているか、入社後にそのキャリアパスに沿った道を実現できるかということをメインで見ています。
あなたの上司になるであろう採用担当者とは別に、これまでの経歴を改めて聞かれることもあります。
役員面接(最終面接)で聞かれること
役員や場合によっては社長が最終面接で面接官となるケースもあります。細かい仕事の内容などは分からないので、仕事に関しては、できる限りわかる言葉で伝えることがのぞましいです。役員は通常候補者の人柄、熱意や入社動機などをメインで見ています。最後の砦として会社に迎える人物としてふさわしい人物かということを見ることが主な目的となります。
想定が難しい質問
自分の失敗や短所について聞かれる
「これまでにした大きな失敗事例について教えてください。今の仕事にどうやって活かせていますか?」
「〇〇さんは周りの人にどういう人だと言われますか?」
「〇〇さんの短所は何ですか?」
ここでの面接官の意図は、チャレンジしたことがあるか、失敗から立ち直るプロセスを見たいという2点となります。予めそのようなエピソードを用意して、できれば今の業務に行かせていることを見せることができればベストです。
英語での回答を求められる
「経歴を英語でお願いします。」
「自己PRを英語でお願いします。」
外資系やグローバル企業を受ける際には英語での面接は必須になります。しかし、日系企業でもたとえ英語での面接になるという伝達がなくても、英語を使う可能性のあるポジションに関しては、自己PR、経歴、志望動機くらいは答えられるように準備しておきましょう。
時事問題
「最近の業界動向やニュースで気になるニュースはありましたか?」
情報感度を見られる場合があります。業界や、競合情報については、事前に業界研究を行い、最近の業界ニュースをチェックしておきましょう。
転職でどういう質問が来るかを教えてもらう方法
転職エージェントに登録しキャリアコンサルタントに聞くことです。候補者を送り込んでいるエージェントであれば、ある程度これまでの過去実例を知っているので、これまでどういった質問が出たか聞いてみましょう。
こちらもよろしければご参考ください→「転職エージェント利用する際のメリットデメリット」
まとめ
面接の際に聞かれることは、面接官の意図を理解することが重要です。それが分かれば自分がどのような回答をすれば相手側として安心して採用に進んでくれるかを想像してみましょう。
また、転職活動は準備がすべてといっても過言ではありません。面接も準備想定される質問に対して準備した分だけ本番でもうまく受け答えができるようになります。
一度想定質問の回答は言語化してアウトプットしておくけば、よりスムーズに進むでしょう。