転職をした年の年末調整、どう対応すればいいか悩んでいませんか?
「前職と現職がある場合はどうすればいいの?」「必要な書類って何?」など、初めて転職した人にとって、年末調整は複雑に感じるかもしれません。
しかし、年末調整を正しく行わないと、払いすぎた税金が返ってこなかったり、翌年に余計な手間が発生したりする可能性があります。
この記事では、転職者が年末調整をスムーズに進めるために必要な情報である前職の源泉徴収票の取り扱いや保険料控除の申告、確定申告が必要なケースまで、初めての人でもわかるように具体的な手順を紹介します。
年末調整の基本とは

年末調整の概要
年末調整とは、1年間の給与所得に対して源泉徴収された所得税を正確に計算し、過不足を調整する手続きです。
給与から引かれている税金は仮計算に基づいており、年末調整で実際の所得や控除額を反映させることで、適切な税額に修正します。
誰が年末調整を行うのか?
- 原則として、年末時点で在籍している会社が担当します。
- 転職者の場合、前職の給与情報を新しい会社に提出する必要があります。
なぜ年末調整が必要なのか?
- 所得税の計算を正確にし、払いすぎた税金があれば還付するためです。
- 自分で確定申告を行わなくても、会社が代行してくれるため、手間が省けます。
転職者が年末調整で気を付けるべきポイント
転職者には、年末調整で特有の注意点があります。
1. 複数の会社で働いた場合
年末調整を行うのは、年末時点で在籍している会社です。ただし、前職の給与情報を基に調整が行われるため、前職の源泉徴収票が必須となります。
2. 年末調整を受けられない場合
以下の場合は、自分で確定申告を行う必要があります:
- 年末時点で無職だった場合
- 個人事業主やフリーランスとして働いている場合
3. 退職時に受け取るべき書類
前職を退職する際に、以下の書類を必ず受け取ってください:
- 源泉徴収票:前職の給与や税金が記載された重要な書類です。
- 退職所得の源泉徴収票(退職金がある場合)
必要な書類と提出先

転職者が年末調整を正しく行うためには、必要な書類を揃え、期限内に提出することが重要です。このセクションでは、どの書類が必要なのか、どこに提出すべきなのかを詳しく解説します。
必要書類一覧
以下は、転職者が年末調整で用意すべき主な書類です。
1. 前職の源泉徴収票
- 役割:前職で支払われた給与や源泉徴収された税額が記載されている必須書類です。
- 取得方法:退職時に前職の会社から発行されます。未受領の場合は、前職の人事部または総務部に再発行を依頼してください。
- 注意点:この書類がないと現職の会社が正確な年末調整を行えません。
2. 扶養控除等申告書
- 役割:扶養家族の有無や配偶者控除の適用を申告するための書類です。
- 内容:配偶者や扶養家族がいる場合、その人数や年間収入を記載します。
- 注意点:未提出の場合、扶養控除が適用されず、余分に税金が引かれることがあります。
3. 保険料控除証明書
- 役割:生命保険や地震保険、社会保険料などの支払い実績を証明する書類で、控除を受けるために必要です。
- 取得方法:保険会社や社会保険機構から発行されます。年末に自動的に郵送されることが多いですが、届かない場合は再発行を依頼しましょう。
- 注意点:保険料の金額が反映されていないと控除額が減少します。
4. その他の控除証明書(該当者のみ)
以下の控除を受ける場合、それぞれの証明書を準備してください:
- 医療費控除:医療費控除明細書(年間の医療費が10万円以上の場合)。
- 住宅ローン控除:住宅ローン借入金残高証明書(初年度は確定申告が必要)。
- 小規模企業共済控除:掛金の支払い証明書。
提出先
1. 現職の会社
- 年末調整の手続きを行うのは、年末時点で在籍している会社です。これが、書類の提出先となります。
2. 提出する部門
- 通常、人事部または総務部が窓口になります。会社ごとに提出場所が異なる場合があるため、事前に確認しましょう。
提出期限
1. 会社が指定した締切日
- 書類の提出期限は、各企業によって異なります。一般的には11月下旬から12月上旬までに設定されることが多いです。
2. 締切を過ぎた場合の対応
- 締切に間に合わないと年末調整ができなくなり、翌年に自分で確定申告を行う必要があります。締切日を確認し、早めに準備を進めましょう。
注意点とよくあるミス
1. 書類の不備や漏れ
- 必要な書類が揃わないと、年末調整が完了しません。特に「源泉徴収票」や「保険料控除証明書」の不足が多いです。
2. 情報の記入ミス
- 扶養控除申告書に誤った情報を記入すると、税額計算が正しく行われません。記入後に再確認を徹底してください。
3. 提出の遅延
- 締切を過ぎると、会社側が対応できなくなる場合があります。準備は計画的に行いましょう。
年末調整が必要なケースと不要なケース

転職者は、自分が年末調整の対象になるのか、または確定申告が必要なのかを正確に理解することが重要です。このセクションでは、年末調整が必要な場合と不要な場合を具体的に解説します。
年末調整が必要なケース
1. 年末時点で会社に所属している場合
年末時点で在籍している会社が年末調整を行います。これは、転職者でも原則変わりません。ただし、以下の準備が必要です:
- 前職の源泉徴収票を提出すること
現職の会社が正確に1年間の所得税を計算するためには、前職の給与情報が必要です。この情報がない場合、現職の給与分しか調整されないため、正確な税金の計算ができなくなります。
2. 年間の収入が給与所得のみの場合
給与所得のみで、他に副業や不動産所得などの追加収入がない場合、年末調整によって所得税の過不足が調整されます。
- メリット
確定申告をする必要がなく、会社が代行してくれるため手間が省けます。 - 注意点
控除対象となる保険料や扶養控除に必要な書類を提出しないと、還付額が減少する可能性があります。
3. 途中で転職した場合
同じ年に複数の会社を経験した場合でも、年末時点の勤務先が年末調整を行います。ただし、以下が必須です:
- 全ての源泉徴収票を提出する
例えば、2社以上で働いた場合は、それぞれの源泉徴収票を現職の会社に提出してください。 - 注意
前職での所得税が適切に計算されていない場合は、不足分を追加で支払う必要が生じることがあります。
年末調整が不要なケース
1. 年末時点で無職の場合
転職後、年末時点でどの会社にも所属していない場合、年末調整は行われません。この場合、翌年の確定申告を通じて税金を調整します。
対応方法
- 前職の源泉徴収票を入手
年間の収入を正確に把握するために必要です。 - 確定申告期間に手続き
確定申告は翌年の2月16日から3月15日までが期間です。
2. 自営業やフリーランスの場合
給与所得ではなく事業所得が主な収入源の場合、年末調整は適用されません。自営業者は毎年確定申告を行う必要があります。
対応方法
- 収入と経費を正確に記録し、必要書類を準備します。
- 控除可能な項目(青色申告特別控除、事業経費など)を最大限活用してください。
3. 副業収入や不動産収入がある場合
本業以外に副業収入や不動産収入がある場合、年末調整ではこれらの収入を反映できません。この場合も、確定申告を行う必要があります。
対応方法
- 副業収入の確認
- 収入金額が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。
- 経費の整理
- 副業や不動産収入に関連する経費を控除することで課税額を減らせます。
- 必要書類の準備
- 本業の源泉徴収票
- 副業の収入明細や経費領収書
- 不動産所得の契約書や収支報告書
年末調整が不要な場合の確定申告例
ケース1:年末時点で無職の場合
- 必要書類:前職の源泉徴収票、保険料控除証明書、医療費控除明細書(該当する場合)。
- 申告内容:年間の所得に基づいて、所得税を調整します。
ケース2:給与所得以外に副業収入がある場合
- 必要書類:本業の源泉徴収票、副業の収入・経費明細。
- 注意点:副業で赤字が出た場合でも、確定申告を行うことで所得全体の課税額を減らせる場合があります。
年末調整の判断フロー
1. 年末時点で会社に所属している?
- はい:現職の会社で年末調整を受ける。
- いいえ:翌年に確定申告が必要。
2. 副業収入や不動産所得がある?
- はい:年末調整後、追加で確定申告を行う。
- いいえ:年末調整で対応可能。
3. 必要書類は揃っている?
- はい:現職の会社に期限内に提出。
- いいえ:書類を早急に準備して提出。
年末調整が完了しないとどうなる?

年末調整が完了しない場合、以下のような影響が生じる可能性があります。これを避けるためには、書類の準備や提出を確実に行うことが重要です。
1. 所得税の還付が受けられない
年末調整では、給与から天引きされた所得税を再計算し、過払い分が還付される仕組みになっています。しかし、年末調整が完了しない場合、以下のことが起こります:
- 過剰に支払った所得税がそのままになり、還付されない。
- 控除(保険料控除、扶養控除など)が適用されないため、納税額が増える。
実例
- 生命保険料控除を申告しなかった場合、10,000円以上の還付を受け取れないことがあります。
- 医療費控除の申請漏れにより、支払った医療費の一部が還付されない。
対策
- 必要書類を揃え、会社が設定した締切に間に合うよう提出する。
- 提出漏れがあった場合、翌年の確定申告で調整可能です。
2. 翌年に確定申告が必要になる
年末調整ができない場合、税金の過不足を翌年の確定申告で調整しなければなりません。確定申告は手間がかかるため、年末調整で済ませる方が効率的です。
確定申告が必要になるケース
- 前職の源泉徴収票がない。
- 保険料控除証明書や扶養控除申告書を提出しなかった。
- 年末時点で会社に所属していなかった。
確定申告の流れ
- 必要書類(源泉徴収票、控除証明書など)を揃える。
- 税務署に提出するか、e-Taxを利用して申告する。
3. よくあるトラブルとその対応
トラブル1:源泉徴収票の紛失
- 影響:現職の会社が正確な調整を行えなくなる。
- 対応策:前職に再発行を依頼する。
トラブル2:控除証明書の未提出
- 影響:本来受けられる控除が適用されず、税金を多く支払うことになる。
- 対応策:保険会社やローン会社に再発行を依頼する。
トラブル3:提出締切を過ぎた
- 影響:年末調整が行えず、確定申告が必要になる。
- 対応策:早めに会社に相談し、次善策を確認する。
転職者向け年末調整の具体的な流れ

転職者が年末調整をスムーズに完了させるためには、以下の手順を正確に進める必要があります。このセクションでは、具体的な流れをわかりやすく解説します。
1. 必要書類を収集する
収集すべき書類
- 前職の源泉徴収票
前職の給与情報を基に年末調整を行うため必須です。 - 保険料控除証明書
生命保険や地震保険の支払額を証明する書類です。 - 扶養控除等申告書
扶養家族や配偶者控除の情報を申告するための書類。 - その他控除証明書(該当する場合)
例:医療費控除や住宅ローン控除の証明書。
注意点
- 書類の不備があると調整が完了しません。提出前に内容を確認しましょう。
- 書類の再発行が必要な場合は、余裕を持って依頼してください。
2. 現職の会社に提出する
提出の手順
- 提出先の確認
通常は、人事部や総務部が担当窓口です。 - 締切日を守る
提出締切を過ぎると、現職の会社が年末調整を行えなくなります。
よくあるミス
- 書類の一部を提出し忘れる。
- 不備がある書類をそのまま提出してしまう。
対策
- 提出前にすべての書類のコピーを取り、チェックリストを作成する。
3. 不足があれば追加提出する
現職の会社から書類の不備や不足を指摘された場合は、速やかに対応してください。
対応例
- 源泉徴収票が不足している場合
前職に再発行を依頼し、速やかに提出。 - 控除証明書が不足している場合
該当の保険会社やローン会社に再発行を依頼。
4. 年末調整後の確認
年末調整が完了すると、現職の会社から「源泉徴収票」が発行されます。この書類は、翌年の確定申告や各種手続きで必要になるため、必ず内容を確認し、大切に保管してください。
確認ポイント
- 所得税の過不足が正しく調整されているか。
- 保険料控除や扶養控除が正確に反映されているか。
5. 特別なケースへの対応
ケース1:複数回転職した場合
- すべての源泉徴収票を現職の会社に提出。
- 書類の不備がある場合、自分で確定申告を行います。
ケース2:年内に退職し無職となった場合
- 前職の源泉徴収票を用意し、翌年の確定申告で税金を調整します。
年末調整のFAQ:転職者がよく抱える疑問に答えます

Q1. 前職の源泉徴収票がない場合はどうすればいいですか?
A. 前職の源泉徴収票は年末調整において必須の書類です。紛失した場合や受け取っていない場合、以下の手順を取ってください:
- 前職の人事部門または総務部に連絡する
- 源泉徴収票の再発行を依頼しましょう。
- 電話やメールで依頼する際は、退職日や社員番号を伝えるとスムーズです。
- 再発行に時間がかかる場合の対処法
- 再発行の間に、他の書類(扶養控除申告書、保険料控除証明書など)を先に提出しておくと手続きがスムーズになります。
- どうしても入手できない場合
- 年末調整ができないため、翌年に自分で確定申告を行いましょう。その際、前職の給与明細や退職時の最終給与額を活用して申告します。
Q2. 年末調整をしてもらえない場合はどうすればいいですか?
A. 転職先の企業によっては、年末調整を行わないケースがあります。これは、入社時期や会社の方針によるものです。この場合、自分で確定申告を行う必要があります。
具体的な対応方法
- 確定申告が必要な理由
- 年末調整が行われないと、所得税の過不足が調整されません。そのため、翌年の確定申告期間(通常2月16日~3月15日)に自分で申告する必要があります。
- 準備すべき書類
- 前職および現職の源泉徴収票
- 保険料控除証明書、扶養控除申告書
- 必要に応じて医療費控除や住宅ローン控除の証明書
- 確定申告の方法
- 税務署に直接提出するか、e-Taxを利用してオンラインで申告を行います。
Q3. 副業をしている場合、年末調整ではどう扱いますか?
A. 副業収入がある場合、年末調整では本業(現職の給与)分しか調整されません。副業に関する税金の処理は、確定申告で行う必要があります。
副業収入に関する注意点
- 副業収入を確認
- アルバイト収入、フリーランスの収入、インターネットビジネスの収入など、すべての副業収入を合計します。
- 経費の整理
- 副業に関連する経費(通信費、交通費、設備費など)を記録しておきましょう。これを収入から差し引くことで課税対象額を減らせます。
- 確定申告で申告
- 副業収入と経費をまとめ、確定申告で申告します。副業の収入が20万円以下の場合、申告が不要になる場合もあります。
Q4. 転職先に源泉徴収票を提出しないとどうなりますか?
A. 源泉徴収票を提出しないと、転職先の会社は正確な年末調整ができません。その結果:
- 所得税の還付が受けられない
過払いの所得税が戻ってこない可能性があります。 - 翌年に確定申告が必要になる
自分で税金の過不足を調整しなければなりません。
対策
- 前職に再発行を依頼し、可能な限り早めに提出する。
- 万が一提出できない場合は、翌年の確定申告で対応しましょう。
Q5. 扶養控除申告書を出し忘れた場合はどうなりますか?
A. 扶養控除申告書を提出し忘れると、控除が適用されないため、所得税の計算が正確に行われません。その結果、必要以上に税金が引かれることがあります。
対応方法
- 年内に提出する
- 提出が遅れても、年末までに間に合えば調整可能です。
- 年末調整後でも訂正できる場合がある
- 会社に相談し、控除を適用できるか確認してください。
- 確定申告で修正
- 年末調整で控除が反映されなかった場合は、確定申告で修正可能です。
Q6. 医療費控除や住宅ローン控除を受けたい場合は?
A. 医療費控除や住宅ローン控除は、年末調整では扱われません。これらの控除を受けるには、自分で確定申告を行う必要があります。
具体的な手続き
- 医療費控除
- 1年間の医療費が一定額を超えた場合(10万円または所得の5%以上)、その分を控除できます。
- 医療費の領収書を保存し、医療費控除明細書を作成してください。
- 住宅ローン控除
- 初年度のみ確定申告が必要です(2年目以降は年末調整で対応可能)。
- 必要書類:登記簿謄本、ローンの借入金残高証明書など。
Q7. 年末調整で税金が戻ってこないことはありますか?
A. はい、以下の場合は税金の還付が発生しないことがあります:
- 過不足がない場合
- すでに給与から天引きされた所得税が正確な場合、追加の還付はありません。
- 控除証明書の提出漏れ
- 保険料控除や扶養控除などの証明書を提出しないと控除が適用されず、払いすぎた税金が返ってこない可能性があります。
対応方法
- 控除証明書を早めに準備して提出する。
- 提出漏れがあった場合は、確定申告で対応しましょう。
年末調整のまとめ
年末調整は複雑に見えますが、この記事で紹介したポイントを押さえれば安心して手続きを進められます。特に転職者は、前職の源泉徴収票の入手が最優先です。必要書類を揃え、現職の会社に早めに提出しましょう。
年末調整を正しく行って、無駄な税金を払いすぎないようにしましょう。