私はこれまで面接官として、転職15回以上の人も転職未経験の人も見てきましたが、転職回数が多い人は最終的にどこに行きつくのかも見てきました。そしてそういった人には共通の傾向があることが分かりました。
この記事では転職して良い人悪い人について、それぞれが行きつく末路と転職回数の限界について採用側の視点含め説明していきます。
転職を繰り返す人の末路(結論)
転職を繰り返す人は大きく分けて2パターンに分けることができます。市場価値の高い人と低い人です。それぞれの人が行きつくところには大きなギャップがあります。
市場価値の高い人はまず前提として、確立された専門性を持っています。そして、その専門性を業界を変えたり、経験を拡張したり、更に高めるように転職をしています。
こういった人は転職のたびに待遇は良くなり、ポジションも高くなっていきます。
市場価値の低い人は、そもそも市場ニーズがないのに特に大きな目的なく転職してしまい、更に自分の価値が下がっていってしまい、給与は下がり、正社員で働くことすらままならなくなります。
それぞれに分類したうえで最終的にどうなるかを解説します。
市場価値の高い人が転職を繰り返し行きつく末路
経営陣など高いポジションに行き着く
これはジョブホッピングをして市場価値を上げて一番成功する人のパターンです。あまり多くはいませんが、外資系や金融系には一定数います。
非常に優秀ですので、MBAを取得し、新たなスキルを身に付け、野心的にジョブホッピングを繰り返します。最終的にはそれなりの役職につき、中には経営陣や外資系企業のカントリーマネージャー(日本支社長)になる人もいます。
そもそも目指しているところが高く、それに伴うメンタリティやマインドセットを持っている人がいける高みとも言えます。
私が見てきた人で転職5~6回くらいで最終的にこういったポジションに就いている人が多い印象ですが中には10回以上の転職で行き着く人もいます。
起業したり独立する
そもそも価値の高い人は会社員として満足せず、自分で経営をする側になる人もいます。仕事も早く自己管理ができる人は起業したり独立する人も出てきます。
今はプロフェッショナル派遣という専門性の高い人材の高時給派遣するようなサービスもありますし、顧問として受け入れるニーズも増えています。
市場価値の低い人が転職を繰り返し行きつく末路
転職できなくなる
市場価値が低いのに転職を繰り返していると、当然ですが徐々に転職しにくくなります。給与条件を下げて転職をすることはできるかもしれませんが、そのうちそれすらできなくなります。そうなってくると、どこかに留まるしかなくなり妥協して会社を見つける、という悪循環に陥ります。市場価値を上げるような転職をする人とは逆の流れになってしまいます。
正社員で働けなくなる
このパターンはジョブホッピングをする人にわりとあるパターンですが、どこかの段階で契約社員や派遣社員となるパターンです。これが間違いというわけではなく割り切って働くことのほうが向いているという人には適したスタイルともいえるのでなるべくしてなったという見方もできます。
転職を繰り返すジョブホッパーの特徴
好奇心旺盛な人
行動力と好奇心旺盛な人は、キャリアでもよく動きます。落ち着いていられないような人です。隣の芝が青く見え、次々と面白そうだとおもった仕事や企業に行ってしまいます。
理想を求め続ける
これは優秀なジョブホッパーに見かける傾向ですが、自分の理想とするビジネスや、組織の状態を求め続けるばかり、転職を繰り返すケースです。特に自分が描いた戦略が実施できなかったり、組織に問題があると次に動いてしまいます。完璧に理想的な場所などはない、というのが答えなのですが、優秀なジョブホッパーは次の理想郷を求めて旅立ちます。
市場価値が高くよく声がかかる
市場価値が高く、希少性のあるIT系の人材などは良く転職する人もいます。需要がありいろいろなところから声がかかるからです。その分野に世の中のニーズがある限り転職することは可能です。
向上心が高い
向上心が高い人は仕事の経験値を増やすために転職を手段とします。特に、新しい分野の経験IT、AI、デジタル関連、など自分の付加価値を上げることができる経験を取りにいくように転職します。
忍耐力に欠ける
嫌なことがあると逃げるように辞めてしまうような人は一定数います。特にビジネスには波があるのでその波が下向きの時に辞めてしまったり、自分のプロジェクトがうまくいかず辞めてしまったり。中長期で目指しているところがない人が、目先のストレスに捉われ辞めてしまうというは一番多いかもしれません。
飽き性
自分の仕事を一通り覚えたら飽きてしまい、次の新しい仕事を探すかのように転職してしまいます。一定の刺激がないとつまらなくなる人です。
人間関係構築ができない
コミュニケーション能力不足の人にある傾向ですが、うまく人間関係を築けず辞めてしまうケースです。チームでコミュニケーションが取れず一人で抱え込んでしまいます。特に大企業だとストレスを感じやすく、より少人数の会社や一人で仕事が完結するようなポジションに行く人が多いです。
メンタル疾患を持っている
馴染めなくてメンタルが不調になり辞めては転職を繰り返すような人もいます。一度メンタルを患ってしまい完治する前にまた復職して同じことを繰り返してしまいます。
転職を繰り返しても良い人の条件
専門家である
欧米では日本で言われるジョブ型雇用といわれるように、「専門家」であることが当たり前です。よって専門家であるため、常に一定のニーズがあります。特にIT系だったり時代のニーズにあった専門性にリスキリングをしていくことでその市場価値を保っているとも言えます。
人材の希少性がある業界に属している
例えばIT系業界のエンジニアは人材に希少性があるので、少々転職を繰り返しても次の転職先は見つけることができるでしょう。看護師の需要などもそうです。しかし、需要が高いと言えど、転職を繰り返していると狭い業界では(少なくともエージェント界隈では)有名な人になってしまうこともあるので注意が必要です。あくまで目的に沿った転職を心掛ける必要があります。
転職を繰り返してはダメな人
専門性がない
専門性がない人は、若く転職しやすい時期に何回か転職できたとしても、そのあとが厳しくなるので不用意に転職回数を増やさないようにしたいところです。
20代あるいは30代前半までに自分の専門性を身に付け、30代以降は自分の専門性にプラスアルファの領域(業界、ソフトスキル)の掛け合わせで付加価値をつけていくようにするのが理想的です。
その過程で身に着けたいことを実現するために転職する手段を取っても良いですが、専門性がないうちにジョブホッピングすることはよくありません。
キャリアで目指すところがない(転職に目的がない)
目的がないと転職する理由にも目的がなくなりがちです。できれば中長期でぼんやりでも自分がどうなりたいかのイメージを固めておきましょう。そのうえでその時々の目的をもって転職をするのが理想的です。
目的や目標がないと目先の給与アップに捉われ転職してしまったり、現在の会社で少し嫌なことがあったから逃げるように転職をしてしまいます。こういったことにならないようにもなるべく中長期の目標を作っておきましょう。
転職を繰り返しても良い希少性を高める方法
ここで少々転職してもマイナスにならない、希少性を高める方法について紹介しておきましょう。実際に筆者がキャリアを通して実践し続けていることです。
基本的にはコアスキル×業界×ソフトスキルを意識して自分の市場価値を上げていくことができます。
1.コアスキル
まずはコアスキルとなる自分のスキルを作ります。できれば20代のうちに自分の強みにあったニーズのある職種を見つけておきたいです。そのために転職が必要であれば転職しても良いですし、とにかくどの山を登るのかを見つけましょう。
当然そのスキル自体に希少性があればそれだけで価値は高いです。
コアスキルを身に付けた後は、時代に合わせて自分のスキルを更にアップデートしたり、拡張していくことでコアスキル自体の価値も上げていきます。
2.業界
次に、そのスキルの価値が高い業界に身を置くことです。例えばITスキルはIT業界では当たり前であっても、医療業界に行けば社会をよりよくするために求められているにもかかわらず人材が少ないため希少性が上がります。
そのような自分が身を置いてみたい業界を転職エージェントなどを通してリサーチしてみましょう。
3.ソフトスキル
ソフトスキルは、コミュニケーション能力やプロジェクト管理能力など「業務を推進するうえで必要なスキル」のことです。こういったスキルを掛け合わせていくことで自分の市場価値を上げることができます。
特に、外国語、昨今では英語や中国語といったスキルは歓迎されやすく、少々コアスキルが見合わなくても、言語に堪能であることで採用されやすくなります。
できれば不必要な転職は繰り返さない方が良い
面接官をしていて感じることは、若年期に若干ジョブホッピングをしていることは理解できるのですが、30代以降でも頻繁に転職を繰り返すのは正直印象はよくありません。
一度専門性を身に付けたら、次の目標がない限り無計画な転職は避けたいところです。ゴールから逆算して、今の職場では実現できない目標が出てきたら次の目標として転職する。
できる限りこれを条件にすれば、明確に転職の目的ができるので良いでしょう。
不必要な転職を繰り返さない人になる方法
キャリアの目標を中長期で考える
そもそも転職を繰り返す人は、中長期で何をするかが決まってない人が圧倒的に多いです。
転職の目標をはっきりさせましょう。私の場合ですが1転職1目的を心がけ、その目的を達成しない限りは転職はしない覚悟を決めたりしていました。
特に「それを達成すると自分の市場価値が上がる」ことが明確であると中長期でモチベーションも保てたりします。
年代別に見る転職平均回数について
こちらは年代別に転職回数の傾向が見える厚生労働省のデータです。
20代の転職状況
20代前半は1社経験70%ですが、20代後半になると、約半分が転職をするという結果となっています。また、その中でも1回、2回が転職した組の約8割を占めています。
30代の転職状況
30代では1社にとどまっている人の割合は30代後半で15%まで減りました。それでも回数はそれほど多くなく、30代全部でも2社か3社経験にとどまっている人が全体の約半数を占めます。
40代以降の転職状況
じつは40代以降の転職回数は、1社経験が15%を含める~4社経験(転職3回まで)が全体の半分を占めます。
4社以上経験があとの半分を占めますが、40代以降の年代はほぼ同じ比率となっていました。その中で6社以上経験という、一部の20%の人だけ転職し続けているという興味深い事実となっています。
転職回数が採用にどの程度影響するか?
こちらのデータは採用関係者に対して転職回数をどの程度気にするかを調査した結果となっています。実際に自分の転職回数が採用側にとってどのように見えるのか、こちらのデータを参考にしてもらえればと思います。
全体として、転職回数を気にしない企業の割合は年代ごとに増えています。
(転職回数を気にしない企業の割合)
20代=18.4%
30代=20.4 %
40代=24.3%
一方で気にする企業は20代では約半分が2回目以上から気にする。
30代40代では転職3回以上を気にするという人が満遍なくいる印象でした。
個人的には、どの年代にも一定気にしない層の採用関係者がいるので、転職しすぎてしまった人もこういった人に当たるまで応募は増やしてヒットする確率を上げれば転職自体はいずれすることはできるのでしょう。
転職回数が多い人に最適な転職手段
前述したとおり、転職回数を気にしない採用関係者に出会うためには、たくさんのヘッドハンターや採用企業と面談することです。
あなたの転職回数を見たうえでそれでも欲しいという企業は市場を見渡せば一定数はあるはずなので、その人たちから声をかけてもらえるような場所を利用しましょう。
私がお勧めするのは、ヘッドハンターや企業の採用担当が集まるスカウトサイトを利用すことです。多くの採用関係者が集まっている代表的なサイトは以下です。
まとめ
転職を繰り返す人には2種類います。市場価値を高めるために計画的に転職する人とそうでない人です。そうでない人は若いうちはいいですが、どんどん転職しにくくなり、正社員という選択肢すら取れなくなります。
こういった条件を避けるためには、以下のように転職する条件を決めておくことです。
- 次の目標が見つかったら転職する
- 給与目的のみで転職しない
- 中長期で市場価値が上がると判断した場合だけ転職する
転職には当然少なからずリスクが伴います。確実に市場価値を上げていける人になるべく計画的に転職をおこないましょう。
<おすすめ関連記事>
「転職後すぐ転職」するのはじつはズルズルいるより合理的な場合もある!3つの理由と対処法を事例とともに解説