初めて転職して外資系企業に挑戦したいけど、実際に外資系企業はどんな文化なのか知りたいという人は多いでしょうか。あるいは興味はあるけど、多くの本当かどうかわからないような恐怖な噂を聞くこともあります。外資系企業での就業経験、採用側としての経験から、外資系企業転職の実情や注意点について解説していきます。
外資系企業への転職における注意点~組織面~
外資系企業は一支部でしかない
外資系企業にとって、日本のオフィスは一拠点でしかありません。外資系企業を理解するには、まずこの事実を考えることで、いかに日本の拠点が利益を上げることに忠実でなければいけないか、を知ることができます。
一拠点として、利益を上げることが目的なので、利益を上げやすい組織を作り、利益を上げるために必要な人を集めたりします。従業員も、一人一人がふわっとした役割を持つのではなく、明確なKPIをもとに日々仕事をすることになります。
本国企業へのフランチャイズ料を支払っている日本拠点も多いため、利益に対してシビアにならざるを得ないのです。
決定権や裁量の大きさはその国の業績による
設立間もない外資系企業や、業績のよくない企業には発言権がありません。よって、重要な意思決定に関しては日本のビジネスであっても本国で下されることになります。
一方で、日本に設立されてから長くある外資系企業や、業績に良い企業は裁量も持たされているため比較的自由に事業運営を任されるようになります。
コロナなどで日本企業撤退や、オフィス縮小など、本国から指令が出たり、場合によっては日本支部再建のために本国から指令を受けて駐在員がきたり、社長が本国の人に代わることもあります。
進出したての外資系企業は不安定
進出したての外資系はビジネスがうまくいかなければ撤退する可能性も秘めています。
創立時に入社して成果を出せば評価される可能性もありますが、リスクもあるでしょう。また、設立間もない外資系企業においては、レポートラインが本国直轄になることが多く、コミュニケーションは直接本国の管轄する部署と英語や公用言語でのコミュニケーションとなります。
外資系企業への転職における注意点~日系企業との文化の違い~
外資系企業の成果主義文化
外資系企業では一人一人の評価はその専門性に関連したKPIで評価されます。このKPIの達成度合いで評価が決まりますが、あまりにひどいとPIP(PerformanceImprovementPlan)という特別プログラムで監視されたうえで業務を行うことがあります。これを行い従業員のパフォーマンスを改善します。
外資系企業ではクビになる!?
外資系企業にはじめて飛び込もうか考えている人によくある不安だと思います。外資系企業といえど日本の雇用法に乗っ取って運営されているので、一方的に従業員をクビになるということは企業の取締役などの重役でない限りはありません。
取締役会で決定されるようなケースでは実質クビに見えるようなケースで退職をさせることはあります。
一つの例は、前述したPIPというプランをパフォーマンスが悪い社員に実施しますが、それが退職するための1ステップになっていることもあります。このプランを受ける前に改善しなければ会社を辞めるという旨記載された書面にサインさせる企業があります。このように合意を得たうえで退職させるステップを踏むことはできます。
もう一つは退職金パッケージプランを対象社員に提示し退職勧告するやり方です。退職しても良いと思うくらい良い制度を提示して退職勧告をしますが、これもいわゆる日系企業でもよくある「早期退職金制度」のようなものです。不景気には組織をリーンにするために実施する外資系企業はよくあります。
現場でどのようなやり取りが行われるかにもよりますが、実際には一方的に解雇するようなケースはほとんどないでしょう。
外資系企業での縦割りの組織構造
一人ひとり部署が縦割りになっていて、特に横の部署が何をやっているか連携をしなければいけないという日系の大企業のような横のつながりはありません。
基本的に自分の所属する部署、チーム、報告先は上司のみ、という縦割り文化です。
無駄な横の組織とのつながりはなく、生産性を重視する外資系企業ならではの組織づくりといえます。
個人主義文化
外資系企業は上述した縦割り文化という組織の作り方で、個人が一つの専門性をもって、仕事に取り組むような組織構造になっています。評価は個人がKPIをもってそのKPIの達成度合いが評価対象となります。
しかし、逆の見方をすると、自分のKPIにのみ集中していれば良いわけです。周りのチームが困っているから助ける、と足を引っ張られることもないので、本来やるべきことに集中するだけで良いとも言えます。
外資系企業での人間関係
外資系企業の人間関係はドライだという噂もありますが、実際にはそんなことはないと私は思います。組織が縦割りで、チームは他チームには関与しないくらいドライかもしれませんがチームワークは重視します。
チームで定期的にBBQをしたり、飲みに行ったりとプライベートで集ってコミュニケーションをとるところも多いです。
外資系企業への転職における注意点~コミュニケーション面~
英語でのコミュニケーション
外資系企業では、入社の際に英語力を問われます。実際には、成熟した外資系企業では上司も日本人で、日々の業務で英語を使うことは少ないにしても、欧米系企業では社内の資料が英語だったり、公用語は英語になります。読み書きは最低でもできないと厳しいでしょう。
また、TOEICの点数が高くて入社できるケースもありますが、基本的には日常的に業務が遂行できる実務レベルの英語力があることが望ましいです。
上司との縦ラインのコミュニケーションがメイン
外資系企業ではレポートラインの上司が決まっています。何かあれば上司に報告しなければいけませんし、自分が今後やりたいことや相談先も上司になるので、上司をどううまく操作するか(Mange up、上をマネージすると言います)というコミュニケーションが高い評価を受けるカギとなります。
誰とでも仕事を円滑に進められるコミュニケーション能力
縦割り文化なので基本的に個人で仕事を進めることが主になりますが、情報提供や連携する点で他部署とのコミュニケーションは発生します。
そこで円滑にコミュニケーションをとることがあなた自身の評価につながったりします。
外資系企業への転職における注意点~職務領域面~
スペシャリスト文化のため役割は領域が限られている
外資系企業での役割は基本手金は一つの専門性分野に限られます。一般的には、ジョブディスクリプションと呼ばれる職務記述書に役割が記載されていて、それに従った業務を遂行することになります。
スタートアップ時の外資系企業は、広く役割がある場合もありますが、ある程度成熟した企業ではあなたの専門性の部分に領域は絞られます。
そのせいか外資系企業に所属している人の転職理由は、他の領域も様々経験したいからという人も少なくありません。
昇格は大手外資系ではかなり難しい
外資系企業では、どのポジションも明確に職務領域が決まっているため、基本的には、マネージャーのポジションが空いたとしてもマネージャーレベルの人の採用を行うことが一般的です。よって、メンバーのスキルが高い、それ相応のレベルだからマネージャーに昇格させるというのは、チームを拡大させるタイミングや、よほど優秀な社員である場合以外でないとありません。
そのため、管理職経験のステップアップするタイミングで転職する人も少なくありません。
外資系企業への転職における注意点~採用面~
スキルベースでの採用が主となり求められるスキルが高い
外資系企業ではポジションに職務領域が明確に決まっているため、そのポジションの要件にフィットする経験の応募者が対象となります。昨今のジョブ型雇用といわれるものに近いです。
採用責任者は直属のマネージャーであることが多く、1次面接でそのスキルがあるかどうかを見極められます。まず何よりスキルが合っていることが重要で、その前提でほかの応募者との比較が行われます。
ソフトスキルも同時に評価される
外資系企業では採用時に、業務推進に必要なソフトスキルを持ち合わせているかをよく見られます。ソフトスキルとは、コミュニケーション能力だったり、プレゼンテーション能力、問題解決能力などの、ハードスキルを使いこなすために必要なスキルです。
面接時の自己紹介や、経歴紹介をする際に見られていたりします。
給与水準は相場がある
給与水準には相場があります。これらの相場は外資系企業に特化した人材会社などが調査して発表しています。これによって、採用の予算が決まっています。
もちろん、優秀な人材には、相場を度外視したオファーが出ることもありますが、基本的には相場をもとに採用が行われます。
職務経歴書には専門分野に特化した記述を
よく職務経歴書に経験したことを網羅的にすべて書く人がいますが、外資系企業を受ける際には得策ではありません。求められているスキルに関連性のある分野でどれくらい広く、深い経験を持っているかを表現するようにしましょう。
あれもこれも記載するとジェネラリストの印象を与えてしまい、いったい何ができる人なのか混乱させてしまうこともあります。実際私も応募者のレジュメを見る際に気にするところですが、多くの経験を書いている人ほど、意外とコアとなるスキルの経験が薄っぺらかったりします。
ハンズオンのスキルが評価される
外資系企業では、マネージャーであっても管理だけする管理屋のような人はあまり好まれません。それよりもマネージャーであっても自分でプロジェクトに入りハンズオンで仕事をするような人が重宝されます。
マネージャーであっても、いかに自分が仕事を自分の手で行ってきたかをアピールできるようにしておきましょう。
外資系企業への転職における注意点~雇用条件面~
福利厚生は充実していない
外資系企業では、日系企業のような福利厚生には期待できません。交通費などは支給されますが、住宅手当などは出ません。一般に日本に長くある外資系企業は創業間もない外資系企業よりも福利厚生は良い傾向です。
ベース給与が高いが退職金などは出ない
外資系企業は一般にベース給与が高く、一方でボーナスの額や、退職金は日系企業のようには出ません。全体としての給与水準は高いのでその点をどう考えるかによりますが、いわゆる長年勤めて退職金を目当てにしているという人には向いていないでしょう。
外資系企業への転職に向いていないタイプの人
外資系企業は日系企業と明らかに異なる部分があります。転職するにあたり、その異なる部分の注意点として理解したうえで、自分が外資系企業に向いているのか向いていないのかを判断するようにしましょう。
様々な領域の仕事が経験したい人
前述したとおり、外資系企業ではスペシャリスト文化、ジョブ型雇用が基本です。様々な経験がしたいジェネラリスト志向の人には向いていないといえるでしょう。マネージャーなどになり、比較的幅広い業務に携わることになれば外資系での仕事の幅は広がります。
仕事で成果にこだわることが苦痛な人
KPIを自分が持ったり、成果ベースに評価されることが苦痛な人にとって、外資系は非常にストレスが多い職場になるかもしれません。与えられた職務に忠実に仕事をするのが外資系です。逆にKPIさえ達成していれば比較的何も言われないので、その点自由な文化とも言えます。
英語が嫌い
英語が苦手だという人はそもそも外資系が向いていないでしょう。少なくとも欧米系外資系企業では英語が公用語となり、採用面接では英語力チェックが必ずと言ってよいほど入ります。
しかしながら英語力は、必ずしも英語がうまい、という意味合いではないので、英語で言いたいことが伝わることが重要ですので、ブロークンでも全然関係ありません。
外資系企業への転職に向いているタイプの人
一つの分野を極めたい
ある一つの分野を深ぼって専門家になりたいと思っている人には外資系は向いています。その分野に対しての責任はありますが、他の分野は他の専門家に任せれば良いわけですから、自分の職務領域に集中することができます。
英語を使ってグローバルに仕事がしたい
そもそも英語が得意だったり、グローバルに仕事がしたいという人は外資系企業で様々なバックグラウンドを持つ多種多様な人材と交わることができます。日系企業では味わえない醍醐味といえるかもしれません。
仕事の成果にこだわりたい
職務領域が多岐にわたり、なかなか成果を上げにくい環境であることもあります。自分の上げた評価を正当に評価してもらいたい人にとって外資系企業は向いていると言えます。
なぜなら一人一人が明確なKPIを持ち、それぞれの専門分野でやるべきことをやり日本拠点の売り上げを作るというのが外資系企業の特色だからです。
外資系企業への転職は転職エージェントを外資系を使う
じつは外資系企業に行くためには、外資系の転職エージェントを使うのは非常に需要なポイントです。理由は以下のとおりです。
- 外資系企業の採用担当者は外国人が多く英語でのコミュニケーションが必要
- 本国から紹介されたグローバルの外資系転職エージェントが専任でついていることがある
以上のような理由から、日系企業でも外資系企業には入り込めない部分があるのです。
筆者もじつは外資系企業で働きたいとキャリア初期に思っていたことがありますが、日系のエージェントしか当時思い当たるところがなく日系エージェント経由で転職をしていました。英語を使いグローバルに仕事がしたいという希望を出すも、日系企業で少し英語を使う時があるかもしれない、といったポジションや、グローバル展開を考えている、といった企業を紹介されるだけでした。
それが、外資系企業に特化したエージェントに行ったところ名だたる外資系企業の紹介を受け、とにかくこんなにも多くの外資系企業の求人があることに驚きました。
非公開求人として出すことも多く、限られた転職エージェントにしか出さない求人も多くありました。もし外資家企業に行きたいけど日系の転職エージェントに行っている人ならすぐに外資系転職エージェントに登録することをおすすめします。
外資系企業への転職が初めての人におすすめの転職エージェント
JACリクルートメント
イギリスで日本人が創業した会社です。扱っている求人は外資系企業と日系グローバル企業に強くコンサルタントはきめ細かな対応が特徴。フットワーク軽く柔軟に対応してくれます。外資系企業への転職を考えたらまず一度登録してみるべき総合転職エージェントと言えます。
en world(エンワールド)
業界ごとに特化した部門があり、非常に優秀なコンサルタントがそろっています。最初の面談でまず細かくヒアリング、そこからのフォローアップも非常にきめ細やかです。入社後のフォローもあるのが特徴です。
Robert Walters(ロバートウォルターズ)
コンサルタントはコミュニケーション能力の高い外国人が多く、採用企業に対しての提案力や推薦力が高い外資系転職エージェントです。グローバルの人材エージェントに贈られる「ベストリクルートメントオブザイヤー」を2年連続受賞。また、人気大手外資系企業案件に強みをもち、外資系の人材企業が対象となる「リクルートメントアワードオフザイヤー大手企業部門」も受賞しています。
Robert Walters(ロバートウォルターズ)の公式サイトを見る
Michael Page(マイケルペイジ)
イギリスでは老舗の大手転職エージェント。その信頼も厚く日本でも外資系企業から厚い信頼を誇るため非公開で求人を依頼されることが多く独占案件も多い。転職希望者には丁寧な面接対策が実施され、決定率も非常に高い外資系の転職エージェントです。
Michael Page(マイケルペイジ)の公式サイトを見る
まとめ
外資系企業に転職する際に抑えておかなければいけない注意点を改めてまとめました。
- 日本の1拠点であるから採算を重視
- 文化はコミュニケーションが大事
- スペシャリスト文化
- 外資系特化のエージェントを使う!(日系エージェントでは紹介企業が限られている)
大切なことは、自分の目的と価値観が外資系企業とあっているのかをまずは見極めてからチャレンジすることでしょう。また、応募する企業のリサーチも本社含めぬかりなく行うことでより解像度を高めることができるでしょう。
<おすすめ関連記事>
【2023年最新版】外資系企業の中途採用についてまとめました(採用プロセス、内定の取り方、条件交渉の仕方)
外資系の転職で必要なTOEIC点数と実務で必要な英語力について
外資系への転職未経験の人が知っておくべきことと転職で抑えておく3つの方法(年代別)
【2023年版】 外資系転職エージェント・転職サイトおすすめ一覧(業界別)